「なまくらNAMAKURA京在日記」 零

 

 

~はじまりの波紋HAMON~


 

明治まで残り僅か数か月、慶応三年93日、

 

京都東洞陰通で幕府の密偵を斬ると、中村半次郎らは上田藩士の洋学者赤松小三郎を斬った。

 

 

中村半次郎が綴った京在日記は、幕末に直筆で記された暗殺の唯一の記録。

 

 

歴史の雲に覆われた剣士たちの闘いを辿る物語である。

 


 

序幕 150年の眠り 京在日記

 

 

一手 黒船来航

 

  ◆1-1 天保飢饉

 

 

  ◆1-2 浦賀警護1

 

  ◆1-2 浦賀警護2

 

 

 

二手 養老の滝

 

  2-1 整息の崖

 

  ◆2-2 二刀使い

 

 

 

三手 饅頭同心

 

  ◆3-1 小原鉄心

 

  ◆3-2 狂賊黒鬼

 

 

 

四手 大潮到来

 

  ◆4-1 可兒の涙

 

  ◆4-2 有士隊出陣

 

 

 

五手 和田大火

 

  ◆5-1 やゑの簪(かんざし)

 

  ◆5-2 天狗討伐

 

  ◆5-3 上田藩士

 

  ◆5-4 兄弟激突

 

 

 

六手 和宮下嫁

 

  ◆6-1 義士伝承1

 

  6-1 義士伝承2

 

 

  ◆6-2 零の波紋

 

 

 

 ◆あとがき

 

 

 


 

登場人物



 

小宮山(坂下) 利之助  本作の主人公

 

大垣藩士の子、饅頭同心、二刀使いと呼ばれる剣士に成長する。

 

生来の明るさとは別に、大塩平八郎の乱に発する幕末の嵐に巻き込まれていく。

 

 

 

零(しずく)

 

山本の妹、二階堂兵法を兄と共に学び鞘の理を伝承している。

 

利之助は養老の滝で想いを打ち明ける。周囲から慕われる気さくな女性

 

利之助率いる中仙道を駆ける有士隊に随行する。

 

 

 

桐野 利明(中村 半次郎)

 

上田藩士赤松小三郎の暗殺を綴った京在日記を巡り幸と西南の役で出会う。

 

薩摩藩士で西郷隆盛と出会ってから最期まで殉じた情の深い武士

 

 

 

小宮 山幸(こみやまみゆき)

 

利之助の子。西南の役で回想にて登場し養老の滝にかかる、みゆき橋から名をとった。

 

本作で二部での記憶違いがあかされていく。

 

 

 

山本 浩綱

 

利之助の師であり、雫の兄、出自は不明であるが、大垣藩士の推挙を得て小原鉄心の直臣となる。

 

二刀を扱い、小原の軍制改革に従い農兵集団を実戦部隊として鍛え上げる。

 

 

 

小原 鉄心

 

若くして藩主より才幹を買われ大垣藩家老職を任せられる。「藩老」の名で親しまれる。

 

藩政改革の最中、黒船来航・飢饉・大塩平八郎の乱と帰厩に立ち向かう。

 

 

 

可兒 幾太郎

 

大垣藩士の子。後の可兒春琳

 

 

 

小宮 山利益(とします)

 

利之助の父。大垣藩士で小原鉄心の信任厚い剣術家・山本の才腕を評価し鉄心に推挙した。

 

幕臣平八郎の義に加担し直訴状を以て江戸に向かう途中箱根の関で何者かに斬られた。

 

 

 

黒鬼 小宮山高利(たかとし)

 

父の仇を討つため、黒鬼を率いて公武合体を阻み幕府の威信を貶めるため和宮一行襲撃を企てる。

 

 

 

鞍沢 隆士(くらさわたかし)

 

利之助と生涯をともにする一振りの刀を打った赤坂湊の刀鍛冶。一作目の「なまくら刀」を鍛え直し「不惜身命」と銘を刻んだ。

 

 

 

山口善次郎(やまぐちぜんじろう)

 

大垣藩士・利之助の同僚・船町奉行所同心、大垣有士隊二番隊隊長を兼任する。

 

二階堂平法禁忌奥伝まで伝授されており、利之助と1度だけ立合いをしたが決着はついていない。

 

聡明であり上役の信任も篤く、大垣の両河と謳われる剣腕を持つ。

 

 

 

 

 

 

饅頭屋(すゑ)

 

 

利之助の好物饅頭屋の女将。

 

井伊掃部に仕えるが桜田門外の変で、国許大垣に戻り小原鉄心の援助で饅頭屋を出した。

 

利之助に、小宮山高利の影を見る。簪をいつも大切にもっている。

 

 

 

饅頭屋喜平太

 

すゑの饅頭屋に奉公する明るく小太りな男。利之助には便利屋のように扱われる。

 

有士隊結成前より利之助を慕い禁門の変以降も生き残った古参兵。利之助の亡き後は可兒に従い兼用隊として明治を生きた。

 

 

 

小十郎

 

有士三番隊副長として闘い喜平太と共に兼用隊として明治まで生きた。

 

剣士としての才能もあり、利之助をよく支えた。

 

 

雪村 平助

 

上田小県に居を構える公儀隠密の幕臣。(赤松外伝の主人公)

 

赤松小三郎外伝では主人公として描かれる芦田清次郎とは莫逆の友

 

 

 

芦田 清次郎(あしだせいじろう)のちの「赤松小三郎」

 

上田藩士芦田家の次男、学術に優れ、江戸への遊学経験もあり、一度見た書物や図面、絵を正確に模写するなどの特技をもつ。後に横浜で英国士官との交流から洋式の練兵書を翻訳するなど洋学者として成長し赤松小三郎と名を変える。

 

※経緯は不明だが和宮下嫁にかかわる沿道諸藩の警備陣容を写した直筆史料が上田市博物館に実在する。

 

 

 

雪村組の卓三

 

赤松小三郎外伝で登場する、脚力と石礫に自信のある子ども。

 

 

 

坂下家

 

大垣藩算用方の家で小原鉄心の信頼も厚い。利之助には養父であったことを語らず藩老小原の命で小宮山の家再興を命じられ小宮山のついだ利之助にも真相は語らなかった。

 

坂下家の母が武士らしくと紺色の生地の羽織を用意したものを利之助は愛用した。

 

 

 

黒鬼(天狗)

 

大塩平八郎の乱から数年後、木曽路・美濃路で大坂に向かう米問屋の荷駄を襲撃するなど繰り返す一党。

 

公武合体を阻むことで一致した徒党であるが武力集団としての統率は高い・大垣藩有士隊と激突する。

 

 

 

大垣有士隊

 

大垣藩兼用隊の前身として創作:大塩平八郎乱を契機に、実戦を担う軍の必要性を感じた小原鉄心の命で結成。不作に苦しむ農村から集められた若者が殆ど。大垣では小原鉄心の私兵扱いで三番隊まで結成されている。