あとがき

 

2014年「なまくらNAMAKURA京在日記秘録」を描いてから既に4年。

 

原案のプロットとしてなまくらは三部作と記してきた。本作はその第一部で幕末のはじまりを描きたいと思っていたからだ。作者は幕末のはじまりが黒船来航など人的な外圧によるものでなく、噴火、地震などの災害、大火、飢饉政など人智の及ばない自然災害のなか困窮する庶民生活のなか起こった幕臣大塩平八郎の蜂起こそが幕府の支配体制の終わりへのはじまりであったと考えている。

 

この発想は前作から3年。体調不良は悪化し、筆も進まぬままであったが、時折でかけた旅先で見つけた史跡、資料、ひととので出会いから見つけてきた点を作者なりに結ぶと線となった。

 

第一作は幸運に恵まれ映画化が叶い、自主上映に留まらず、県内外での上映機会にも恵まれ、中村半次郎氏の縁者にも行き会う機会に恵まれ「京在日記利秋」の実物をこの手に持ち拝見することもできた。

 

その場が本作の始点ともなる大塩平八郎の乱が起こった大阪天満橋近くの喫茶店であった。

 

義士たちが生きた時代と現代で迷う己を重ねながら描いた作品。

 

大儀や正義、信念、それぞれが信じることを成すため駆けようとしても、時代のうねりには逆らえず不条理なほど理不尽なことに直面しながらも生き抜いてきた人々の叡知があっていまの私たちの生活がある。歴史の史実をないがしろにしてよいとは思わないが、人々の叡知の集積こそが歴史だと作者は思う。描きなおす(歩み出す)きっかけに感謝する。

 

 

 

追記

 

名称、地籍などの検証、時代考証、推敲、校正に手をつけていない段階ではあるが原案として記す。

 

 2018年